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特殊詐欺とだまされたふり作戦:法の眼で見る“受け子”の罪【仮定的蓋然性説・具体的危険説】


特殊詐欺とだまされたふり作戦:法の眼で見る“受け子”の罪

特殊詐欺と聞いて思い浮かぶのは、電話でお金を騙し取られるオレオレ詐欺や架空請求詐欺などの手口でしょう。近年、これらの詐欺手口は高度に組織化され、「かけ子」「出し子」「受け子」「指示役」といった役割分担で、まるで映画のように犯行が進められています。その中でも、「だまされたふり作戦」が犯人逮捕に一役買っているのをご存じでしょうか?


だまされたふり作戦とは?

この作戦は、被害者が詐欺だと気づいた後も犯人の指示に従うふりをし、警察と協力して犯行現場で逮捕するというものです。詐欺師をまんまと欺くこの作戦、効果的ではあるものの、法的には様々な議論を巻き起こしています。


「不能犯」とは何か?

ここで注目したいのが「不能犯」の法理です。簡単に言うと、犯行が物理的に不可能な場合、その行為に対して罪を問えるのかという問題です。だまされたふり作戦において、詐欺が未遂に終わる場合、受け子の行為は不能犯として不可罰ではないかという議論が出てくるのです。


受け子の罪責をめぐる裁判例

特に注目すべきは、平成28年頃から多くの裁判所で受け子に対して無罪判決が続いた点です。受け子が詐欺に加担するタイミングが、すでにだまされたふり作戦が始まっている段階であった場合、詐欺が完遂される可能性はなく、受け子の行為は不能犯として処罰できないとされたのです。


最高裁の判断

しかし、平成29年12月11日の最高裁決定では、受け子に詐欺未遂罪の共同正犯が認められました。この決定は簡潔なものであり、解釈の余地を残す内容でしたが、現行の法制度下で受け子の罪をどう扱うかに関する重要な基準となりました。


承継的共犯とは?

ここで登場するのが「承継的共犯」という概念です。簡単に言うと、犯行の一部を引き継いだ共犯者の罪をどう扱うかという問題です。先行行為が成功していない場合、後から加わった者に対してどのように責任を問うかが議論の焦点となります。


結論

現金送付型特殊詐欺事案における受け子の罪責は、不能犯の問題や承継的共犯の概念と深く関連しています。これらの法理を理解することは、犯罪の実態を把握し、効果的な対策を講じるために非常に重要です。現行法下での解釈や適用が今後どのように進展していくか、引き続き注目が必要です。


  • 特殊詐欺

    • 被害者を欺いて現金や財産を騙し取る手口の総称。オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺などが含まれる。

  • だまされたふり作戦

    • 犯罪者を逮捕するための手法。被害者が詐欺に気づいた後も、犯人の指示に従うふりをして警察と協力し、犯行現場で逮捕する。

  • 不能犯

    • 犯行が物理的に不可能な場合、その行為が罪に問えるかどうかを論じる法理。

  • 受け子

    • 特殊詐欺において、被害者から現金や財産を受け取る役割の人。

  • 出し子

    • 特殊詐欺において、振り込まれた現金を口座から引き出す役割の人。

  • かけ子

    • 特殊詐欺において、被害者に電話をかけて欺罔行為を行う役割の人。

  • 指示役

    • 特殊詐欺の組織内で、受け子や出し子に指示を出す役割の人。

  • 承継的共犯

    • 未遂の場合の共犯者の罪をどう扱うかについての概念。犯行の一部を引き継いだ共犯者の責任を問う。

  • 具体的危険説

    • 犯行が現実的に危険をもたらす可能性があるかどうかを基準にして、罪の成立を判断する法理。

  • 仮定的蓋然性説

    • 未遂犯が実行行為を行った場合、その行為が仮定の世界で既遂に至る可能性を持つかどうかを評価する理論。



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