📝 【図解】5分でわかる!薬局ネット販売禁止事件(令和3年判決)と憲法22条
行政書士試験の憲法において、近年最も注目されている判例の一つが「要指導医薬品ネット販売禁止事件(最判令和3.3.18)」です。従来の「目的二分論」だけでは解けないこの問題を、網羅的に解説します!
この記事で学ぶ重要トピック
本記事では、令和4年度行政書士試験・問4のテーマである「要指導医薬品ネット販売禁止事件(最判令3.3.18)」を徹底解説します。 近年、憲法22条1項の「職業の自由」をめぐる判例理論は大きな転換点を迎えており、従来の知識だけでは太刀打ちできません。 以下の重要事項を軸に、試験に出るポイントを整理していきましょう。
【根拠条文】
憲法第22条第1項:「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
※判例上、これには「職業活動(営業)の自由」も含まれると解釈されます。
【最重要キーワード】
- 職業活動の自由: 職業を選ぶだけでなく、どう営業するかという「態様」の自由。
- 消極目的規制: 国民の生命・健康などの安全を守るための規制(警察目的)。
- 立法府の合理的裁量: 専門的な事案に対し、国会の判断を尊重するという司法のスタンス。
- 比較考量: 規制の必要性と侵害される利益を天秤にかけて合憲性を判断する手法。
読了目安:約5分 | 行政書士試験頻出ランク:★★★
【問題】薬局ネット販売規制の合憲性
そこでXは、この法律の規定が違憲であり、この種の医薬品についてもネットで販売する権利が自らにあることを主張して出訴した。この問題に関する最高裁判所の判決の趣旨として、妥当なものはどれか。
- 憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。
- 規制の合憲性を判断する際に問題となる種々の考慮要素を比較考量するのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、規制措置の内容や必要性・合理性については、立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り、裁判所はこれを尊重する。
- 本件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味するため、許可制の場合と同様にその必要性・合理性が厳格に審査されなければならない。
- 本件規制は、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極目的ないし警察目的のための規制措置であり、この場合は積極目的の場合と異なり、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことを要する。
- 本件規制は、積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたものであり、この種の規制措置については、裁判所は立法府の政策的、技術的な裁量を尊重することを原則とする。
1. 問題の背景:何が争われたのか?
【事案の概要】
薬局経営者Xが、一部の医薬品(要指導医薬品)について「薬剤師の対面指導」を義務付け、ネット販売を禁止した法律は、憲法22条1項の「職業の自由」に違反すると主張して争った事件です。
2. 各選択肢の網羅的解説(行政書士レベル)
選択肢1:憲法22条1項の保障範囲 ❌
「保障するのは職業選択の自由のみであるが、活動の自由も尊重に値する」
- 妥当ではない: 判例は、憲法22条1項が「職業選択の自由」だけでなく、「職業活動(営業)の自由」も直接保障していると明言しています。「尊重に値する」という間接的な表現では不十分です。
選択肢2:司法審査の基準(正解肢) ⭕
「比較考量は第一次的には立法府の権限であり、合理的裁量の範囲なら裁判所は尊重する」
- 妥当である: 職業の自由への規制は専門的・政策的な判断が必要なため、まずは国会(立法府)の判断を尊重します。裁判所は「明らかに不合理」でない限り、その裁量を認めます。
選択肢3:制限の程度の評価 ❌
「ネット専業業者には職業選択の自由そのものへの制限を意味し、厳格に審査される」
- 妥当ではない: ネット販売ができないことは大きな制約ですが、判例はあくまで「販売方法(態様)」の規制と捉えました。「薬局経営自体」を禁止しているわけではないため、職業選択の自由そのものの制限とは認められませんでした。
選択肢4:消極目的規制とLRAの基準 ❌
「消極目的規制であり、他の手段(LRA)では達成できないことを要する」
- 妥当ではない: これは昭和50年の「薬事法距離制限事件」の理論です。今回の判例では、目的が消極的(安全確保)であっても、一律に「より制限の少ない手段(LRA)」を求める厳格な審査は行わず、立法府の広い裁量を認めています。
選択肢5:積極目的規制との混同 ❌
「積極的な社会経済政策の一環として設けられたものである」
- 妥当ではない: 本件の目的は「薬害防止・国民の健康保護」であり、これは典型的な消極目的(警察目的)です。肢5は「小売市場距離制限事件(昭和47年)」のような、経済的弱者保護を目的とする規制の説明です。
3. 重要判例比較表
| 判例名 | 規制の目的 | 審査基準の傾向 |
|---|---|---|
| 薬事法距離制限(昭50) | 消極目的 | 厳格(LRAの基準) |
| 小売市場距離制限(昭47) | 積極目的 | 緩やか(明白性の原則) |
| 要指導医薬品(令3) | 消極目的 | 合理的裁量を尊重(比較考量) |
💡 まとめ:ここだけは覚えよう!
- 憲法22条1項は「職業選択」も「営業活動」も両方守っている。
- 「ネット販売禁止」は、職業そのものの禁止ではなく「営業のやり方(態様)」の規制。
- この判決では、消極目的であっても立法府(国会)の合理的裁量を広く認めた。
- 昭和50年の判決(厳格)と、令和3年の判決(裁量尊重)を混同しないのが合格の鍵!
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試験突破のための「プラスα」知識
令和4年問4の解説、いかがでしたでしょうか?この判例を深く理解するためには、過去の巨大な判例との「対比」が欠かせません。最後に、試験直前に見直したい背景知識をまとめました。
🔍 周辺知識・出題の背景
1. 薬事法距離制限事件(昭和50年)との関係:
かつては「消極目的=厳格な審査(LRA)」という公式が絶対的でした。しかし、本件(令和3年判決)では、同じ薬事関連の消極目的であっても、IT化や専門性の向上を背景に「立法府の広い裁量」を認める傾向が強まっています。この「審査基準の揺れ」が試験で最も狙われます。
📈 今後の出題傾向
- 最新判例の重視: 行政書士試験は、最高裁の最新トレンドを真っ先に取り入れます。判旨の「一語一句」を正確に読み取ることが求められます。
- 目的二分論の相対化: 「積極か消極か」だけで答えが出る問題は減っています。本問のように「手段の不合理性」や「裁量の範囲」を問う問題に慣れておきましょう。
💡 アドバイス:憲法は「暗記」ではなく「判例のロジック」を追いかけるのが得点への近道です!
記事へのご質問や不明点があれば、いつでもお問い合わせください。合格を応援しています!
🎴 触れてチェック!重要用語フラッシュカード
※マウスを乗せる(PC)か、タップする(スマホ)と答えが表示されます。
【ひっかけ注意】一問一答チェックテスト
本試験で狙われる「言い換えの罠」を見抜けますか?
Q1. 憲法22条1項は「職業活動の自由」を直接保障してはいないが、規定の精神に照らして尊重すべきである。
答えを確認する
判例は「直接保障している」と考えます。「精神に照らして尊重」という間接的な表現は典型的なひっかけです。
Q2. ネット専業業者にとって、本件規制は「職業選択の自由そのもの」に対する制限といえる。
答えを確認する
判例は、あくまで「販売方法(態様)」の規制と判断しました。実態がどれほど厳しくても、憲法上の評価は「職業選択の自由そのものの制限」ではないとされた点に注意!
Q3. 消極目的規制の場合、より制限の少ない手段(LRA)の存否を常に厳格に審査しなければならない。
答えを確認する
昭和50年の判決(旧理論)に引きずられないように!令和3年判決では、消極目的であっても「立法府の合理的裁量」を尊重し、柔軟に判断しています。
Q4. 規制の必要性・合理性については、第一次的には立法府(国会)が判断権を有する。
答えを確認する
これが最新判例のスタンスです。「裁判所が真っ先に決める」のではなく「国会の判断を尊重する」という順序を覚えましょう。
重要用語・完全網羅ライブラリ
- 憲法22条1項(居住・移転及び職業選択の自由)
- 「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定。経済的自由権の代表格。単に職業を選ぶだけでなく、その職業を維持・継続する自由もここに含まれます。
- 職業選択の自由(狭義)
- 自分がどの職業に就くかを決定する自由。この自由を制限する「許可制(特定の条件を満たさないと開業できない)」などは、個人の人権侵害の度合いが大きいため、裁判所はより厳しくチェックする傾向にあります。
- 職業活動の自由(営業の自由)
- 選択した職業をどのように遂行するか(営業時間、販売方法、価格など)の自由。令和3年判決では、ネット販売禁止はこの「活動の自由(態様)」の制限にすぎないと判断されました。
- 公共の福祉
- 他人の人権や社会全体の利益を守るための「ブレーキ」の役割。職業の自由は社会的相互関渉が大きいため、精神的自由(表現の自由など)に比べて、この公共の福祉による制限をより強く受けやすい性質があります。
- 消極目的規制(警察目的規制)
- 国民の生命や健康に対する危害を防止するための規制。本件(薬の対面販売義務)もこれにあたります。従来の判例では、この目的の規制は厳しく審査すべきとされてきました。
- 積極目的規制(社会政策的規制)
- 社会経済の調和的発展や経済的弱者の保護を目的とする規制(例:小売市場の距離制限)。政策的な判断が強く絡むため、国会の裁量が広く認められます。
- 目的二分論
- 「消極目的規制」か「積極目的規制」かによって審査基準(厳しさ)を使い分ける手法。昭和の判例理論の柱ですが、最新判決ではこの区別にこだわりすぎない傾向が見られます。
- 立法府の合理的裁量
- 専門的・技術的な判断が必要な法律について、まずは国会(立法府)の判断を尊重しようという考え。裁判所が「明らかに不合理」と言える場合を除き、国会の決めたルールは有効(合憲)とされます。
- 第一次的判断権
- 社会的にどのような規制が必要かを「最初に検討して決める権限」のこと。本件判例では、この権限が国会にあることを強調しました。
- 比較考量
- 「規制によって得られる利益(国民の健康)」と「失われる自由(営業の自由)」を天秤にかけて、そのバランスが妥当かどうかを慎重に見極める手法です。
- LRAの基準
- 「同じ目的を達成できるなら、もっと自由を制限しない方法があるはずだ」と追求する厳格な審査手法。昭和50年の薬事法事件では使われましたが、令和3年判決では採用されませんでした。
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