アデニル酸とグアニル酸それぞれの代謝過程、及びそれらの最終代謝産物を記述し、もし最終代謝産物が血液中で高いとどのような疾病をもたらすかを詳細に記述せよ。
プリンヌクレオチドは、5’-ヌクレオチターゼの作用によってリン酸が取り除かれる経路で分解される。5’-ヌクレオチターゼによってアデニル酸(AMP)はアデノシン、グアニル酸(GMP)はグアノシンとなる。アデノシンはアデノシンデアミナーゼによって脱アミノ化されてイノシンになる。イノシンは加水分解されて、プリン塩基のヒポキサンチンとD-リボースになる。ヒポキサンチンはキサンチンオキシダーゼによってキサンチンに変えられる。キサンチンはキサンチンオキシダーゼによって尿酸へと酸化される。グアノシンは遊離のグアニンへと分解され、アミノ基が除去されてアデニル酸と同様にキサンチンとなり、尿酸に変換される。霊長類ではこの尿酸で代謝は終わるため、プリンの最終代謝物は尿酸である。しかし、ほとんどの哺乳類や多くの脊椎動物では尿酸はさらに尿酸オキシターゼの作用によってアラントインへと分解される。他の生物において反応経路はさらに延長される[1]。
痛風は、血中や組織内の尿酸レベルが上昇することによって引き起こされる関節病である。関節は尿酸ナトリウム結晶が異常沈着するために炎症を起こし痛みや関節炎症状が現れる。過剰の尿酸は腎臓の尿細管にも沈着するので腎臓にも影響する。痛風の正確な原因は分かっていないが、最も一般的なものは「腎臓での尿酸排泄の低下」である。腎臓が尿酸を尿に十分に排泄できずに尿酸の血中濃度が異常に高くなるケースの場合には、プリン代謝に関連するいずれかの酵素の遺伝的欠損が考えられる。痛風は食事療法と薬物療法の組み合わせによって治療される。肝臓や腺性臓器製品などのヌクレオチドや核酸に富む食品については食餌からの摂取が控えられる。さらに、プリンの尿酸への変換を触媒するキサンチンオキシダーゼの阻害薬アロプリノールの使用は症状の著しい改善をもたらす。
[1] 霊長類は、プリン分解由来の尿酸としてよりも尿素回路を経て生成する尿素として遥かに大量の窒素を排泄する。同様に魚類は先に述べた代謝過程よりもはるかに大量の窒素をアンモニウムイオンとして排泄する。
炭水化物を摂取したときに生体に順次起こる反応を説明せよ。
糖質の代謝は解糖系、TCA回路といったエネルギー生産の中心であり、血糖値の維持に寄与している。代謝の場は細胞質で糖のリン酸化の形で変化するのが特徴である。リボースの供給源であるペントースサイクルは、生合成における還元剤としての水素源(NADPH)供給の代謝系でもある。TCA回路は有機酸で構成された酸化過程で有酸素下においてエネルギーを生産するシステムであるが、脂質やアミノ酸代謝の合流点でもあり相互変換の場となっているので代謝の中心といえる。
糖質は口腔消化などにより二糖類にまで分解されて、二糖類は小腸粘膜細胞により酵素による消化がなされ単糖類に消化される。単糖類は小腸粘膜により吸収され門脈に入る。糖は小腸上皮細胞でナトリウムイオンとの共輸送系で吸収される(二次能動輸送)。特異的な担体にはナトリウムイオンの結合部位が存在し、ナトリウムイオンが吸収されると同時に糖も細胞内に取り込まれる。五炭糖である果糖は促通拡散で吸収される。セルロースは全く吸収されない。
通常、生体のエネルギー源は、糖(糖質の内99%はグルコース)と資質である。蛋白は飢餓などで食物摂取が抑制されない限りはエネルギー源として利用されることはない。ブドウ糖一分子は嫌気系解糖系で2個、TCA回路で30個、合わせて32個のATP分子を合成する。脂質は、脂肪酸とグリセロールに分解されて解糖系に入り、アミノ酸はその種により解糖系やTCAサイクルに入りATPを産生する。
解糖系はグルコースをピルビン酸にまで分解させる代謝経路で、嫌気的条件でATP生産が可能である。なお、グルコースとピルビン酸を除いた全ての代謝中間体はリン酸化合物である。グルコースは細胞内に取り込まれるとリン酸化反応を受けG-6-Pとなる。その後フルクトース-6-リン酸(F-6-P)に異性化され、再度リン酸化を受けフルクトース-1,6-二リン酸(F-1,6-P)ができる。ここまでは六炭糖構造であるが、次のアルドラーゼにより2個の三炭糖化合物に分解される。ここまでの解糖反応では2ATP/グルコースを消費する。解糖系全体を一分子グルコース当たりでみると、F-1,6-Pまでのステップで2ATPを消費し、2分子のグリセルアルデヒド-3-リン酸から2分子のピルビン酸までのステップで4ATPを生産する。結局、1分子のグルコースを2分子のピルビン酸に解糖すると正味2分子のATPと2分子のNADHが生産されることになる。
炭水化物に富む食事をとると血糖値は上昇する。神経細胞はグルコースを唯一のエネルギー源としており、グルコースの供給が絶えると中枢神経機能に重大な障害が生じることになる。それを防ぐため、生体には血糖値を一定レベルに維持する機構がいくつか存在する。血中へのグルコース供給は、グルコースの腸管からの吸収と肝臓からの分泌で行われる。肝臓と血中とのグルコースの移動は濃度勾配に従う。血糖値が上昇するとインスリンが分泌されて肝臓におけるグリコーゲン合成、脂肪細胞、筋細胞へのグルコース取り込みが促進し、血糖値は正常値に戻る。食事によるグルコース供給が立たれると、肝臓からグルコースが分泌される[1]。まず、グルカゴンの分泌が盛んになり、肝臓に蓄えられているグリコーゲンが分解されてグルコースとなり血中に放出される。筋細胞に蓄えられているグリコーゲンも分解されてグルコースになるが、血中には放出されずエネルギー源として用いられる。グルカゴンや糖質コルチコイド(コルチゾール[2])は肝臓や脂肪細胞で中性脂肪の代謝を促進し、遊離脂肪酸(FFA)とグリセロールを合成する。FFAはエネルギー源として用いられ、グリセロールは肝臓で糖新生の基質となる。コルチゾールは筋細胞に作用してタンパク質の分解を促進し、アラニンなどのアミノ酸を血中に放出する。アラニンは肝臓に取り込まれ、糖新生の基質として利用される。糖新生によって合成されたグルコースは肝臓から分泌され、血糖値を維持する。
[1] 肝臓のグリコーゲンは20時間程度の絶食で枯渇すると知られている。
[2] 糖質コルチコイドであるコルチゾールは多彩な生理作用を示す。エネルギー代謝に対する作用としては、肝臓における糖新生の促進とその結果としての血糖値の上昇である。
脂肪酸の生合成及び脂肪酸のβ-酸化について記述せよ。
脂肪酸の酸化分解過程は全ての細胞にあり、最も生産効率の良いエネルギー生産(β酸化系、TCA回路)過程である。糖質によるエネルギー生産(通常時)と異なる点は、緊急時に稼働する代謝系であり、非常時のエネルギー供給系という点である。脂肪酸及び脂肪(トリグリセリド)の合成系は過剰エネルギーを貯蔵する機能で、肝臓や脂肪組織において活発である。また、生体で生理機能を持つ脂質が多く作られるがその材料としてのコレステロール代謝も重要である。糖質やタンパク質から活性酢酸(アセチルCoA)がつくられ、容易に脂質へ変換される。脂質代謝に出てくるモノカルボン酸は、補酵素A(CoA)との結合体で変化していくのが特徴である。
脂肪酸の合成は栄養状態によって影響される。余った代謝エネルギー源は脂肪酸合成へと向けられる。解糖系から与えられるピルビン酸はTCAサイクルに入るが、エネルギー使用が少なければサイクルはあまり回らずクエン酸及びイソクエン酸が蓄積する。クエン酸類はミトコンドリアを自由に出てアセチルCoA、さらにATPを消費してマロニルCoAを生産する。これらが脂肪酸合成の材料となる。マロニルCoAはビオチン酵素(アセチルCoAカルボキシラーゼ)の触媒により生成する。この酵素は全脂肪酸合成をコントロールしている。この酵素はビオチンを持った4つのサブユニット構造をしており不活性であるが、クエン酸またはイソクエン酸の存在下でさらに重合し多量体となって活性化する。例えば、パルミチン酸は細胞質中において1分子のアセチルCoAと7分子のマロニルCoAから合成される。この間8分子のクエン酸、15分子のATP及び14分子のNADPHを消費して1分子のパルミチルCoAができる。
アドレナリンは脂肪組織のリパーゼを活性化し、血中に脂肪酸とグリセリンを放出する。脂肪酸は水に溶けないため、血清蛋白のアルブミンと結合して輸送され、肝臓などの細胞に取り込まれる。細胞質中で脂肪酸はアシルCoA合成酵素によりATPを使って活性化されアシルCoAとなる。アシルCoAはミトコンドリア内膜を通過できない。そこで、内膜中にあるカルニチンにアシル基を渡し、カルニチンサイクルを介してミトコンドリア内に入り再びCoAと結合してアシルCoAとなる。
アシルCoAはFADを補酵素とする脱水素酵素によって2Hが引き抜かれ、エノイルCoAとなる。次にH20を得てβ-オキシアシルCoAに変わってから第2回目の脱水素反応が起こる[1]。β-ケトアシルCoAはCoAと反応し(チオラーゼ)、アセチルCoAとしてC2ユニットを切り離す。このような一連の反応が何回か繰り返され、脂肪酸は全てアセチルCoAとNADHまたはFADH2に分解される。アセチルCoAはTCAサイクルへ入る。新たなNADHやFADH2を生産し、これらはミトコンドリアの内膜上で直接酸化されATPを合成する。β酸化系が亢進すると大量のアセチルCoAが生産され、アセトアセチルCoAの方向へ流れ、3-ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)ができる。HMG-CoAからはケトン体ができる。肝臓ではチオホラーゼが存在しないためこれを血中に放出するが、他の組織では、ケトン体をアセチルCoAに戻し、エネルギー生産に利用する。
[1] NAD+を補酵素とする。
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