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FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)


フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)は、いくつかの代謝反応に必要な酸化還元反応補因子である。FADには2種の酸化還元状態が存在し、それらの生化学的役割は2種の間で変化する。FADは還元されることによって2原子水素を受容し、FADH2となる。

FAD FADH2 equlibrium.png

FADH2はエネルギーキャリアであり、還元された補酵素ミトコンドリアでの酸化的リン酸化基質として使われる。FADH2は酸化されてFADとなり、これは一般的なエネルギーキャリアのATPを2分子作ることが可能である。真核生物の代謝でのFADの一次供給源はクエン酸回路β酸化である。クエン酸回路では、FADはコハク酸フマル酸に酸化するコハク酸デヒドロゲナーゼ補欠分子族である。一方、β酸化ではアシルCoAデヒドロゲナーゼの酵素反応の補酵素として機能する。

FADはリボフラビン(ビタミンB2)から誘導される。いくつかの酸化還元酵素はフラボ酵素またはフラビンタンパク質(フラボプロテイン)と呼ばれ、電子移動において機能する補欠分子族としてFADを要する。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%83%87%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8C%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%83%81%E3%83%89



複合タンパク質型酵素の非タンパク質部分を補酵素(Coenzymes)という。補酵素を必要とする酵素において,補酵素は触媒する反応の重要な部分を担う。補酵素の多くは,ビタミンからつくられる。
補酵素の働きの例として,乳酸デヒドロゲナーゼによる触媒反応に補酵素(NADH2+)がどのように関与するかを示す。

乳酸デヒドロゲナーゼのNADHから,Hがピルビン酸に移動する。同時に,酵素の活性中心のHis-195のイミダゾール基のHがピルビン酸のカルボニル基のOによって引き抜かれてOHとなり,乳酸が生じる。この反応は立体選択的で,生じる乳酸はL型である。
ブタ筋肉乳酸デヒドロゲナーゼ(二量体)
中央に2分子のNADHが結合
乳酸デヒドロゲナーゼの触媒機構
補酵素の分子中には左のようなアデニンヌクレオチド(ADP)を含むものが多い。この部分は「ヌクレオチドハンドル」と呼ばれ,一般に補酵素の機能には関与しない。ヌクレオチドハンドルは酵素分子に補酵素を認識させる役割をもつ。

 アデノシン三リン酸 (Adenosine triphosphate, ATP)
高エネルギー化合物の代表である。吸エルゴン反応と共役してエネルギーを供給する。
  ATP + H2O → ADP + Pi + 30.5 kJ
 ATP + H2O → AMP + PPi + 32.2 kJ  (この場合は,ATP 2モルが消費されたことに相当する)
また基質としても働き、キナーゼの補酵素としてリン酸基転移やAMP基転移に関与する。

ATPは次のようにしてつくられる。
  1. 基質レベルのリン酸化(解糖
  2. 酸化的リン酸化(呼吸鎖
  3. 光リン酸化(光合成)

 ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (Nicotinamide adenine dinucleotide, NAD+)
デヒドロゲナーゼの補酵素の代表である。ビタミンの1つであるナイアシンから生体内で合成される。アルコール,アルデヒドなどの酸化還元反応の際の水素の授受に広く関与する(下図を参照)。異種原子間の2つの水素を同時に引きぬく点がFADと異なる。NADH + H+をNADH2+と表すことがある(本サイトではスペースの関係でこの表記法をとっている)。
NADH2+呼吸鎖に入り,3 ATPを生成する。
特殊な例として,NAD+のニコチンアミド部分が切り離され,残りのADP-リボースがタンパク質のArg残基に結合する反応(ADP-リボシル化)の基質となることがある。

 ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate, NADP+)
ビタミンの1つであるナイアシンから生体内で合成される。NADPH2は脂肪酸合成、コレステロール合成、光合成などに必須の補酵素であり、生体内での需要が多い。動物ではホスホグルコン酸回路(ヘキソースリン酸側路,HMS)で大部分が合成される。
 酸化還元反応において水素の授受に関与する。構造的にはNAD+とはリン酸基が付いただけの違いで,ともにデヒドロゲナーゼの補酵素となる。しかし、NAD+とは異なり、異化代謝ではなく、通常,脂肪酸合成や光合成のような同化代謝で利用される。

フラビンアデニンジヌクレオチド (Flavin adenine dinucleotide, FAD)
酸化還元反応の際の水素の授受に関与する(下図を参照)。NAD+と共に、デヒドロゲナーゼの補酵素として働くが,炭素原子上の2つの水素を1つずつ引きぬく点でNAD+と異なる。酵素結合型の場合もあり、フラビン環のCH3基がCH2になって,酵素のHisやCys残基に共有結合する。生体内で,ビタミンB2から合成される。
 (例) コハク酸 + FAD → フマル酸 + FADH2; アシル-CoA + FAD → 2,3-トランスエノイル-CoA + FADH2

 補酵素A (Coenzyme A, CoA)
アセチル基をはじめとして、種々のアシル基の転移反応に関与する。アシル基は末端のSH基にチオエステル結合で結合するため、アシル-CoAは高エネルギー化合物の一つである。
 アセチルCoAは、例えば脂肪酸のb-酸化など多くの代謝過程で生じ、TCA回路の入口として重要な代謝中間体であると共に、ケトン体、脂肪酸の合成など、多くの化合物の原料としても利用される。補酵素AのAはAcetylationの意味。

構成成分の1つであるパントテン酸はビタミンの1種である。

 リポ酸 (a-Lipoic acid)
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体や2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の補酵素の一つとして用いられ、アシル基転移に関与する。 TCA回路の項を参照。

 チアミンピロリン酸 (Thiamine pyrophosphate, TPP)
a-ケト酸の酸化的脱炭酸で、アシル基の転移に関与する(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ゛複合体など)。 TCA回路の項を参照。

チアミンはビタミンB1である。

 ピリドキサルリン酸 (Pyridoxal phosphate, PALP)
a-ケト酸のアミノ基転移や、アミノ酸の脱炭酸に関与する補酵素。 アミノ酸の異化代謝の項を参照。

 テトラヒドロ葉酸 (Tetrahydrofolic acid, THF, Coenzyme F)
1基の転移に関与する補酵素。プリンヌクレオチドのde novo合成の利用例がある。Pteridine環はグアニンの誘導体で,小腸細胞のジヒドロ葉酸レダクターゼによって葉酸のプテリン環が還元されてつくられる。また,p-aminobenzoic acid(p-アミノ安息香酸)は微生物にとって必須のビタミンである。

 転移される原子団としては,ホルミル基,メチレン基,メチル基などがある。
 
N10-ホルミル-THF   N5,N10-メチレン-THF  N5-メチル-THF

 UDPグルコース (Uridine diphosphate glucose, UDPG)
 高エネルギー化合物で, グリコーゲン合成で利用される補酵素である。糖やウロン酸の転移に関与する。

 補酵素Q (Coenzyme Q, CoQ)
 電子伝達系の電子伝達体として用いられ,2Hの転移反応に関与する。

 ビオチン (Biotin, Coenzyme R)
ビオチンはビタミンの1つである。酵素のリシン(Lys)残基に共有結合し、CO2の転移反応に関与する。CO2の低い反応性を高める役割をもつ。カルボキシラーゼの補酵素である。糖新生の第1段階のCO2の転移反応に利用例を見る事ができる。
  ピルビン酸 → オキサロ酢酸

 補酵素B12 (Cobamide, Coenzyme B12)
 5'-デオキシアデノシルコバラミンともいう。D. Hodgkinによって1956年に構造決定された。ビタミンB12からつくられる。ヘムに似たコリン(corrin)環の中心に6配位のCo(III)イオンをもつ。そのうち4つはコリン環のピロールNに,1つは5,6-ジメチルベンズイミダゾール,もう1つは5'-デオキシアデノシル基に配位している。
機能は
  1. 隣接炭素原子間でHと他の原子団の交換
  2. 2分子間のメチル基転移
の2つである。
 メチルマロニル-CoAムターゼ(脂肪酸のb-酸化(奇数炭素)) とメチオニンの生合成酵素に例がある。

 S-アデノシルメチオニン (S-Adenosyl-L-methionine)
テトラヒドロ葉酸と同様,メチル基の転移反応に関与する補酵素である。アミノ酸の代謝やホスファチジルコリンのde novo合成などに利用例を見る事ができる。
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/coenzyme.htm


『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 (ブルーバックス) 』




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